高齢者の3人に1人、また、認知症高齢者では半数以上が何らかの睡眠障害を抱えているといわれています。
心身ともに健康に生活するためには、良質な睡眠が欠かせません。睡眠は脳機能や身体機能を維持・向上させるための基本です。日本人の5人に1人が睡眠障害またはその疑いがあるという結果になっています。
60歳以上になるとその割合はさらに高まり、約3人に1人が何らかの睡眠障害があるといわれています。一口に言っても、不眠症を始め、睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群、周期性四肢運動障害など、さまざまな種類があります。
高齢者は一般的に早起きになります。それは、睡眠の質に変化が生じるからです。体内時計が加齢により変化し、血圧や体温、ホルモン分泌など睡眠を支える生体機能リズムが若年者より早くなります。そのため、高齢者の早起きは特に問題とはいえません。
睡眠の浅さも高齢者の特徴のひとつと言えるでしょう。深い睡眠が減り、浅い睡眠である「レム睡眠」が増えます。単純に表現すれば、うとうとした状態のこと。このため、尿意やからだの軽い痛み、ちょっとした物音で起きる頻度が増えます。
高齢者が睡眠障害を患う主な原因は3つです。
①心理的ストレス
独居高齢者が増えており、生活への不安感からストレスを溜める傾向にあります。話し相手がおらず、ストレス解消の機会もないため、重大な睡眠障害にかかる可能性もあります。配偶者や子供との死別によって、喪失感を抱き、一時的に睡眠障害になるケースもあります。
②身体疾患による痛み
狭心症や心筋梗塞、関節リウマチによる痛みなどがあります。
③精神疾患
主には、うつ病、アルコール依存症、認知症です。うつ病は女性に多く、60~70歳代の女性は要注意です。アルコール依存症は高齢者の約3%が罹患していると言われています。認知症は高齢者のうち、約5人に1人がなるといわれています。精神疾患をもつ高齢者には不眠症状が高頻度でみられ、認知症患者が増加し続けるなか、睡眠障害は大きな社会問題になっていくと思われます。
睡眠障害の改善法として、厚生労働省から12の指針が公開されています。
①睡眠時間は人それぞれ。日中に眠くならなければ十分
長さにこだわる必要はありません。高齢になると、睡眠時間は自然に減っていくと覚えておきましょう。
②刺激物を避け、眠る前にはリラックスする
就寝4時間前には、カフェイン入り飲料(コーヒーやお茶など)を避けましょう。読書や音楽、入浴など自分なりのリラックス方法を見つける事も大切です。
③眠くなってから床に就く。就寝時間にこだわらない
眠ろうと意気込むと頭がさえて、寝つきが悪くなります。無理に寝ようとせず、寝床を出て趣味の時間に当てるのもいいでしょう。
④同じ時刻に毎日起床する
早起きが早寝に繋がります。勘違いしている方がとても多いのですが、早寝だから早起きになるのではありません。
⑤日中は日光を浴び、夜は照明の光を調節
目が覚めたら日光を浴び、体内時計をリセットしましょう。夜は明るくなり過ぎない様に照明の光量を調整しましょう。
⑥規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣
朝食は必ず摂取、夜食は軽めに抑えましょう。適度な刺激を与える事で入眠し易くなります。運動時間は、午後から夕方がベストです。
⑦昼寝をするなら、15時前の20~30分
長い昼寝は睡眠に悪影響を与えます。どうしても昼寝をしたい時は15時前にしましょう。
⑧眠りが浅いと感じたら、遅寝・早起きを励行する
寝床に長くいると熟睡感が減退します。遅寝・早起きをすると、自然と眠くなります。
⑨いびきや呼吸停止、足のぴくつき、むずむず感は要注意
気になったら、すぐ専門医にかかりましょう。
⑩十分眠っても日中の眠気が強い場合はすぐに専門医へ
⑪睡眠薬代わりの飲酒はしない
深い睡眠を減らし、睡眠障害の原因にもなります。寝る3時間前には飲酒しない事。
⑫睡眠薬は医師の指示のもと使用する
一定時間に服用し、就寝するよう心がけましょう。アルコールとの併用は副作用が出やすくなるため、注意が必要です。
高齢になると睡眠時間が長くなる傾向がありますが、85歳以上になると9.4時間眠っている計算になります。長くてもよく眠れいているとは限りません。睡眠の質が落ちるだけに要注意です。健康維持・向上に大切なのは、睡眠時間ではなく、「睡眠の質」です。
体の痛みやストレス解消など、出来る事から始めていきましょう。